4.3 DOIデータモデル
DOIデータモデルは、方針と様々なツールで構成されており、登録機関のニーズに合わせて拡張することができます。
4.3.1 DOIデータモデル方針
DOIメタデータモデル方針は、メタデータの内部管理とRAネットワークの中での登録機関(RA)間のメタデータ交換に関するものであり、次の2つの目標を目指しています。
- DOIシステムユーザーのネットワーク内での相互運用性を促進する。
- RAによるDOI名の管理で最低限のクオリティ水準を確保し、DOIシステム全体の管理を円滑化する。
DOIメタデータ宣言に関する方針
以下の原則に従って、DOI名で識別されるすべてのエンティティに対してメタデータ宣言を行う必要があります。
- 宣言には、DOIカーネルスキーマによって定義された最小限の必須メタデータを含めなる必要があります。このスキーマは可能な限り範囲を限定するように設計されており、DOIシステムによって識別可能なすべてのエンティティに適用できます。
- 追加のメタデータを宣言することができます。他登録機関(RA)とのメタデータとの相互運用性が必要な場合は、合意済みのメタデータ交換スキーマに基づいて行います。
- DOIメタデータは必ず、すべてのデータ要素と許容値を定めるDOIカーネルスキーマを通じ、基礎となるオントロジーに基づいて宣言します。
DOIデータモデル方針では、登録機関(RA)の入力メタデータとサービスメタデータの宣言の形式とコンテンツについて、いかなる制限も設けていません。ただし、DOIカーネルで暗示されている最小要件に入力メタデータを対応させなければなりません。RAは、独自のメタデータスキーマとメッセージを定めることも、入力メタデータとサービスメタデータの宣言の全部または一部に、既存スキームを用いることもできます。
DOI名管理に関する方針
DOIデータモデル方針の第2の目標は、登録機関(RA)によるDOI名の管理で最低限のクオリティ水準を確保し、DOIシステム全体の管理を円滑化することです。この目標は第1の目標である相互運用性を後押しするものとみなすこともできますが、厳密には、RAになる見込みがある組織に責任をもってDOI名を発行する力があることを徹底させ、紛らわしいDOI名がネットワークの中に入り込まないようにするという課題に対処するものです。
この方針では、簡単な試験でRAの能力を試すことになっています。この試験ではDOIカーネル宣言を行う能力が問われます。それには、明確なDOI名割り当てを支援する内部システムを整備し、ネットワークの中で相互運用性を万全にサポートできる根本的な健全性がRAに求められます。さらに、この方針では、RAがDOI名の割り当て日と、DOI名を割り当てられた登録者の身元情報を管理することを義務付けています。
DOIデータモデル方針は、DOIシステム全体の管理を円滑化する仕組みの将来的な発展を支援するものでもあります。それには、例えば、DOIカーネルスキーマに登録された用語をタイプ(種類)として使用してDOI名やサービスを分類する必要があります。
4.3.2 DOIカーネルメタデータ
DOI名を割り当てるには、登録者がDOI名を割り当てるオブジェクトを記述するメタデータを提供する必要があります。少なくとも、このメタデータはDOIカーネルメタデータ宣言で構成されます。
DOIカーネルはDOIカーネルスキーマによって規定されています。(10.1 DOIカーネルスキーマ参照)
DOIカーネルに含まれる基本情報
DOIカーネルメタデータ宣言は、次のような基本的な質問に答える必要があります。
- 対象物に割り当てられたDOI名は何か
- 対象物は別の識別子で参照されることが一般的か
- 対象物は通常何と呼ばれているか
- 対象物の一次タイプは何か(例:creation、party、event)
- 対象物のstructualTypeは何か(例:creationの場合:physical、digital、performance、abstraction)
また、対象物の一次タイプに応じて、対象物に関する他の質問と、次のような管理上の質問にも答える必要があります。 - このDOI名を発行した登録機関はどこか
- 宣言が発行されたのはいつか
- カーネルのバージョンはどれか
カーネルのデータ要素はDOIカーネルスキーマで定められています(詳細は10.1 DOIカーネルスキーマ参照)。
注:登録機関は、DOIカーネルの許容値のオープンリストに新しい値を追加することができます(4.3.6 データモデルの拡張と保守を参照)。
DOIカーネルの目的
DOIカーネルの目的は、認識と相互運用性を可能にすることです。
- 認識
ここでの認識とは、カーネルメタデータでDOI対象物にあたる物の種類を、(様々な分類によって)明確に示し、ユーザーが(様々な名前、識別子、関係から)その物を妥当な精度で識別できるようにすることを意味します。この2つは相補的な関係にあります。つまり、あるものが(例えば)「カサブランカ」だということを知らなくても、それが映画やDVDであることを知ることは可能で、その逆も同様です。認識は、対象物の発見に必要であり、また、意図的か偶然かを問わず、対象物が発見された際にユーザーに情報を提供するためにも認識が必要です。メタデータのユーザーは人または機械です。カーネルの構造から対象物の一意な記述(曖昧さ回避)が提供されるとは限らず、場合によってはさらに特化されたメタデータ要素が必要になることもあります。実際には対象物へ付加的な記述テキストを追加することで一意な記述を確実に実現できますが、正式な分類、測定値、識別子、時間などの構造化されたコンテキスト型メタデータの代わりに付加的な記述テキストが使用されている場合、相互運用性という第2の目標が損なわれるため、この方法は満足のいくものではありません。 - 相互運用性
ここでの相互運用性とは、異なるDOI登録機関からのカーネルメタデータを結合できること、またはセマンティックなマッピングや変換を行わなくても同じソフトウェアで問い合わせができることを意味します。相互運用性は、データ要素やその値が多様なメタデータスキーマに対して共通である場合に実現します。カーネルは共通のコア要素と分類を義務づけることによってこれを直接的に実現しますが、この方法による相互運用性には当然限りがあります。
4.3.3 追加メタデータ
追加メタデータを宣言することもできます。他登録機関(RA)のメタデータとの相互運用性を確保する必要がある場合は、合意済みのメタデータ交換スキーマに基づいて行う必要があります。XMLスキーマ、RDFスキーマ、JSONスキーマを使用できます。
DOIカーネルスキーマは、メタデータ交換スキーマ(10.1 DOIカーネルスキーマ参照)のすべてのデータ要素と許容値を規定します(10.1 DOIカーネルスキーマを参照)。
4.3.4 データディクショナリ
宣言されたDOIメタデータのデータ要素と許容値はどれも、データディクショナリで規定されています。このデータディクショナリは、DOIカーネルスキーマによって定義されています(10.1 DOIカーネルスキーマ参照)。
ディクショナリへの用語追加は、登録機関(RA)の申請により行われます。
ユーザーはデータディクショナリの基礎となる概念や構造を理解しなくてもデータディクショナリを利用できます。このディクショナリの主な特徴は次のとおりです。
- 必要な詳細度・粒度に応じて拡張可能。
- ビジネスモデルに依存しない。
- あらゆる実装テクノロジーに依存しない。
- 既存のメタデータスキーマを利用可能。
- 複数の異なる特化された表示(ビュー)を利用できる。
- ローカル用語を収録できます。
RAは独自のローカルデータ要素/名をオントロジーに加え、必要な用語だけを使用できます。 - 複数の異なる内部システムから複数の異なる用語を収録し、それらをマッピングできます。
- 外部スキーム(ISO領域コード、通貨コード、言語コードなど)と標準スキーム、そして分野特有の外部スキームが取り込まれているため、ローカル用語とシームレスに連携して扱うことができます。
- 公的用語(パブリックターム)はすべて、すべてのRAからアクセスできます。
注:データディクショナリの規定に用いられていたDOIデータディクショナリファイルは、現在は更新されていません。DOIデータディクショナリの最終更新は2015年です。最終更新版はDOIのウェブサイトでご覧できます 。
4.3.5 基礎となるオントロジー
1.4 厳格な原則に基づく構造化セマンティクスで述べたように、DOIデータモデルはINDECSフレームワークに基づいています。
オントロジーの論理データモデルは、一貫性と論理性を備えた世界観を提供しますが、従来の知識表現における分類学的アプローチとは異なり、厳格な親子階層構造には従いません。用語は複数の親から意味を継承し、より複雑な関係を維持することができます。相互運用可能なデータディクショナリは様々なコンピュータシステムやメタデータスキーマからの用語を収録し、それらの相互関係を形式的に示します。DOIのウェブサイト(Data Model Underlying Ontology)には、高水準概念モデルの説明図なども掲載されています。詳細はDOI財団にお問い合わせください。
4.3.6 データモデルの拡張と保守
登録機関は、以下のことを要請できます。
- DOIカーネルスキーマへの新たな用語の追加や、追加のメタデータスキーマの公表。
- DOIカーネルスキーマの値のオープンリストへの新たな値の追加。
既存のDOIスキーマに変更を加える権限はスキーマ作業部会にあります。DOI財団の基本的な役割は、その変化が専門家による評価を受け、実用的環境の中で試験され、堅実な原則に基づいていることをユーザーに保証することです。
詳しくは7.4 DOIメタデータスキーマの管理を参照してください。