DOI® HANDBOOK

1.10 DOIシステムの利点

  1. DOIハンドブック
  2. 第1章 DOIシステムの概説
  3. 1.10 DOIシステムの利点

本項では、DOI®システムによって可能となる利点を説明します。

1.10.1 コンテンツ管理と発見(ディスカバリー)の改善

DOIシステムを実装する利点として内部コンテンツ管理が円滑化するほか、迅速で拡張性のある製品開発が可能になります。製品開発を簡単で低費用なものにする4つの重要な利点があります。

1.10.2 リンク切れのソリューション(永続性)

DOIシステムは、「http 404 not found」(リンク切れ)という有名なウェブ上の問題のソリューションを提供します。

問題は、URL(Unified Resource Locator)がインターネット上のリソースの識別子であると同時にロケーターでもあることです。URLの識別子である特定のコンテンツは、所在地に解決できる文字列でもあります。その結果、リソースがあるサービスから別のサービスへ、あるサーバーから別のサーバーへ、ある会社から別の会社へ移動すると、そのリソースは、そのサービス、サーバー、またはそのリソースをホストする会社を識別する新しいURLを取得することになります。古いURLは、ほとんどの場合、機能しなくなり、そのリソースへの、古いURLを使った以前の参照は無効となります。

DOIシステムでは、識別子が永続的であるのに対して、それが解決するメタデータは時間とともに変化し、特にURLは更新される可能性があります。詳しくは第3章 DOI名前空間を参照してください。

1.10.3 強力なメタデータモデルによる識別子の相互運用性

デジタルネットワークにおける対象リソースは、多種多様なソースに由来しており、確立された公的スキーム、公式標準、事実上のスキーム、または私的なカタログ番号といった識別子が付与されている場合があります。情報の保存、再利用、交換を容易にするための重要なステップは、ユーザーがこれらの識別子(および関連データ)を異なるアプリケーション間で再利用できるようにすることです。

例えば、複数の登録機関(RA)が異なる出版社のジャーナル論文にDOI名を発行している場合、一部のRAや出版社は、他のRAがサポートするジャーナル関連サービスに自社のDOI名が含まれることを望むと考えられます。同様に、多くのRAは、他のRAが発行したDOI名を、自らが提供するサービスに含められることを望むでしょう。このような相互運用性は、DOIシステムの主な利点のひとつです。

DOIシステムにおける識別子の相互運用性を実現するために使用されるのが、ツールとポリシー(方針)です(1.4 厳格な原則に基づく構造化セマンティクスを参照)。

1.10.4 他の識別子システムとの互換性

DOIシステムは、既存の識別子システムに取って代わるものではありません。既存の識別子やメタデータのスキームを使用する、あるいはそれと連携する相互運用性を目的として設計されています。

DOIシステムは他のスキームを明示的に認識します。ISO DOI仕様(ISO 26324)は、既存のスキームを認識するための仕様を定めています。少なくとも、DOIメタデータには、他のレジストリ識別子が存在するという事実を記録する必要があります。以下の追加手順(オプション)も可能です。

1.10.5 サービスの柔軟性と拡張性

DOIシステムは、あらゆる種類の物理的、デジタル、抽象的なタイプのエンティティ、およびエンティティ間の階層と関係をサポートします。

その拡張性のあるアーキテクチャにより、DOIシステムは膨大な量のDOI名の登録と解決を処理することができます。実際、DOIシステムはHandleシステム®のローカルHandleサービス(LHS)で構成されています(LHSは、1つまたは複数のプレフィックス配下のDOI名を管理します)。各LHSは複数のサービスサイトに複製され、各サービスサイトは複数のコンピュータ(サーバー)で構成される場合があります。つまり、任意のLHSに対するサービス要求を、異なるサービスサイトやサービスサイト内の異なるサーバーに分散させることができます。

1.10.6 保護され、信頼できる情報

DOI名の識別と解決に使用されるHandleシステムは、公開鍵基盤(PKI)に基づき、クライアントとサーバーの認証、データの機密性と完全性、否認防止を提供します。

1.10.7 情報トレーサビリティ

トレーサビリティはDOIシステムによって提供されるものではありませんが、Handleシステムの基盤となるデジタルオブジェクトアーキテクチャ(DOA)を介して(より正確には、DOAのデジタルオブジェクトインターフェースプロトコル(DOIP)を通じて)利用可能になります。

デジタルオブジェクト(DO)(対象物を表す)は、そのライフサイクル全体を通して、様々なアクターに操作される可能性があります。各アクションはDO自体で追跡され、この情報は様々なアプリケーション向けに処理できます。例えば、映画業界では、デジタル収益レポートや詳細な消費指標を資産別に提供することができます。