2.1 DOIシステムのガバナンス機関:DOI財団
このセクションでは、DOI®財団のステータス、役割、会員制度、ガバナンスについて説明します。
2.1.1 DOI財団のステータス
DOI財団は米国デラウェア州の一般会社法に基づいて組織され存在する非株式会員制法人で、1997年10月10日に登録されました(登録番号2807134 8100)。DOI財団の法人登記住所はCTコーポレーション経由で、次のとおりです。
The Corporation Trust Company, Corporation Trust Center, 1209 Orange Street, Wilmington DE 19801, USA.
DOI財団は、DOI財団の会員によって選出された理事会によって統制されています。DOI財団は非営利団体です。つまり、1986年の内国歳入法第501条(c)(6)節(以下参照)で米国連邦所得税を免除された法人による実行が許可されてない活動を行うことは禁じられています。DOI財団の運営上の住所は次のとおりです。
The DOI Foundation, c/o EDitEUR Limited, United House, North Road, London N7 9DP, UK.
DOI財団が負担する経費は、自己資金ビジネスモデルによるシステムの運営から回収されます。DOI®システムの実装は付加価値をもたらしますが、データ管理、インフラストラクチャの提供、ガバナンスにおいて、必然的にいくらかのリソース経費が発生します。これらはすべて、永続性に寄与します。永続性は技術ではなく組織の機能です。
世界中でDOI財団を代理する経営代理人がDOI財団と契約を結んでおり、方針の実施やDOI財団の業務全般にわたる管理について責任を担っています。技術的業務、法務、財務といった機能は外部に委託されています。
2.1.2 DOI財団の役割の概略
DOI財団はDOIシステムの登録認定機関および保守機関であり、DOIシステムを統括する中心機関です。DOI登録機関の共通の管理・調整機関です。DOIシステムのうち外部の規格化手順にかけられている側面と、内部の方針および手順で扱われている側面も管理します。登録管理機関としての責務には次のものがあります。
- DOIシステム(ならびに、ISO 26324、ISOの仕様)の適切な使用を促進する。
- ユーザーのニーズに応じてDOIシステムの技術的基盤とデータを保守する。
- DOI名の割り当て、登録、保守、普及について指針を策定する。
- 市場のニーズに合わせてDOIハンドブックと指針を継続的に調整する。
- ISO 26324に関する問い合わせや情報要請に速やかに応じる。
- DOIシステムの調査・品質保証手順を策定する。
2.1.3 ISO 26324 登録管理機関
DOI財団は、ISOとDOI財団の間で結ばれた協定によって管理されているISO 26324登録管理機関です。ISO 26324には、登録管理機関の任務として、提供すべきサービスと技術的責務が規定されています。
登録管理機関が提供すべきサービス
ISO 26324 登録管理機関は下記サービスを提供するものとします。
- この国際規格の仕様に準拠したDOIシステムの推進、調整、監督。
- この国際規格の仕様に準拠した解決、メタデータ、登録機能のための技術と基盤を提供し、選択された技術の変更が以前のDOIアプリケーションと互換性があることを保証する。
- 登録者に固有のDOIプレフィックスを割り当て、割り当てられたDOIプレフィックスの正確な登録を維持する。
- 登録済みDOI名の単一の論理ディレクトリ(DOIディレクトリ)を維持することにより、DOI名と関連するDOI解決レコードの維持を確保する。
- 適切なデータディクショナリの維持または合意された運用により、DOIメタデータの登録とマッピングを可能にする。
- DOI名の永続性やDOIユーザーのネットワーク内での相互運用性を支援するルールなど、DOI登録手続きを管理する方針・手順を実装する。
- この国際基準に準拠した実装の詳細を規定する登録者向けユーザーマニュアルの提供など、 DOIシステムのユーザー向け文書を作成、維持、提供する。
- 関連技術の開発動向をレビューし、適切な構文文字のエンコーディング、解決ソフトウェア実装などについて最新情報を維持する。
- 例えば2名の異なる登録者によるDOI名の割り当てにより、同一の対象物に複数のDOI名が割り当てられている場合に、対象物を統一する記録を提供する。
登録管理機関の技術的責務
ISO 26324 登録管理機関は、ユーザーマニュアルを通じて下記の技術的サービスを提供するものとします。
- 承認済みプロキシサーバー(ウェブブラウザでDOI名を解決するhttps://doi.org/など)のリストを保守する。
- 適切な文字エンコーディングについて最新情報を提供する。
- 解決技術について最新情報を提供する。
- 他のスキームで使われている表現のリストを保守する。
- 一般的なエンコーディングについて情報を提供する。
- 必要に応じて、DOIシステムを利用するサービスにおけるオブジェクトへのDOI名の割り当てについてより制約の大きいルールを指定する。かかるルールが指定されている場合、これらルールはDOIシステム全体の仕様と整合するものとし、本国際規格の一部を構成するものではありません。
- 識別の永続性を支援するためのルールを公表する(例えば、記録保守に関する要件、デフォルトの解決サービス)。
- 各DOI名のメタデータ要素を指定するDOIカーネルメタデータ宣言を公表する。
- DOIシステムのサービスを支援するため出力メタデータを提供する。
- 入力/サービスメタデータ宣言の形式とスキーマの仕様を確立する。
- 選択された複数の既存のスキームにわたって相互運用性を促進するため、DOIメタデータ仕様で使われるデータ要素と許容値を格納するデータディクショナリを提供する。
- DOIメタデータ仕様で使われるデータ要素と許容値(各要素の値として使用できる項目)を格納するデータディクショナリを提供する。
- ISO 26324 登録管理機関によって該当すると判断される他の関連スキーム(ISO領域コード、ISO通貨コード、ISO言語コードなど)のデータディクショナリマッピングを提供する。
- 各カーネル要素につき許容値一式を指定する。
- DOIカーネルメタデータ宣言のXMLスキーマを指定する。
- 必要に応じて他のメタデータ要素とサブ要素のセットを登録する。
- 登録されたDOI名の重複を防ぐ。
2.1.4 戦略的組織の代表
DOI財団の重要な役割のひとつは、DOIシステムの実装にあたって戦略上重要とされる組織を代表することです。これらには次のものがあります。
- DONA財団を中核的組織とするHandleシステム®のガバナンスおよび継続活動への参加
さらに、DOI財団は、DOI技術サポートサービスプロバイダー(現在はCNRI)との間でHandleシステムの提供および維持に関する契約を結んでいます。 - 複数の他組織との公式・非公式の提携や連絡の維持
DOI財団の重要な任務は、関連分野における規格策定状況を把握し、それがDOIシステムの運営にどのように重要な意味合いを持つかを理解し、関連分野の重要な組織/プロジェクトと実務関係を築くことによって、相互利益に向けて協力を促し、複数の開発活動が互いに無関心な状態で同時に進められるのを防ぐことです。 - ISO/IEC MPEG21権利データディクショナリの正式な登録管理機関としての役割
この規格はDOIシステムを使用するための必要条件ではありません。詳細については、までお問い合わせください。
2.1.5 DOI財団の会員制度
DOI財団の活動は、適法の設立趣意書と正式な付属定款に沿ってDOI財団の会員によって管理されています。デジタルネットワーク出版業やコンテンツ配信、権利管理、および関連する実現技術に関心をもつ組織はすべて会員になれます。
会員の義務
DOI財団の会員になることで、会員は以下の事項に同意するものとします。
- 国際的に採用されたデジタルオブジェクト識別規格としてのDOIシステムの地位を確保するというDOI財団の目標を支持する。
- DOI財団の活動に参加する。
- 随時更新される可能性のあるDOI財団の定款、協定、方針を順守する。
- DOI財団ウェブサイトのパスワードで規制された部分へのアクセスをDOI財団の会員に限定する。
- DOIブランドアイデンティティを採用する。
DOI財団は会員に対し、最新のアイデンティティ情報とマーケティング資料を提供する。 - 自機関のプレスリリースやニュース発表の配信先にDOI財団を加え、この後の関連イベントや活動をDOI財団に通知する。
会員のDOI活動に関する選択されたニュースは、元の発表へのリンクと併せてDOIニュースページに掲載される場合がある。
会員の種類
会員権には4種類あります。
- 一般会員
DOIシステムの開発を支持する登録機関以外の組織に与えられます。署名入りの同意書が必要です。
登録機関になるための申請を行う組織にとっては、一般会員であることが条件となります。一般会員が後に登録機関として任命される場合、その会員区分は一般から登録機関に変更されます。 - 登録機関会員
この会員資格は、必要な手続きを経て、登録機関(RA)(2.2.5 登録機関になるためのプロセス を参照)になった組織のみ得ることができます。
RAの主な役割は、DOIプレフィックスを割り当て、DOI名を登録し、登録者がDOIメタデータやDOIレコードを宣言および維持するために必要な基盤を提供することにより、登録者にサービスとアプリケーションを提供することです。RAについて詳しくは、2.2 DOIシステム参加者:登録機関と登録者を参照してください。 - 創立会員
DOI財団を創立するために当初設けられたものであり、知的財産の作成/製作や普及を主たる活動とする組織のみに与えられます。DOI理事会は創立会員区分の適格性を判断する権利を留保します。 - 提携会員
この会員資格は、現在の構成員のうち1名以上が現在DOI財団の会員である専門団体に限定されています。この範囲から外れる組織でも理事会の単独裁量で招かれたり、入会が認められたりすることがあります。提携会員には投票権がなく、理事会の理事になる資格もありません。登録機関にはこの会員区分に入る資格はありません。
一般会員、登録機関会員、創立会員には自身の会員区分の中で年次DOI財団選挙に投票する資格があります(創立会員と一般会員とでは、会員の権利や特典に違いはありません)。提携会員に投票権はありません。
詳しくは、DOIウェブサイトの会員区分でご覧いただけます。
会費
ここでは、DOI財団の会費全般について述べます。会費には次のルールが適用されます。
- 会費は、入会日が毎年の支払い期限日となります。
- 次のように減額が適用されることがあります。
- 一般会員の会費は、理事会の単独裁量で減額される場合がある。
- 登録機関会員の会費は運営費の一部に含まれており、費用分担モデルで1年ごとに配分される(2.2.6 登録機関の料金体系参照)。
- 減額の適用には基準があります。具体的には次のものがあります。
- DOI財団の設立や継続支援にあたって重要な役割を果たしている組織。
- (年収基準を満たした)非営利組織
- (年収およびその他の基準を満たした)営利団体
- 一般会員が後に登録機関として任命される場合、その会員区分は一般から登録機関に変更され、以前の一般会員としての会費のうち期限に達していない部分は、登録機関会員の会費に充てられます。
注:一般的に、会費にかかる費用は加入組織の事業経費として控除されることが見込まれます。ただし、税金控除に関する細かい疑問は、参加組織の税務顧問が担当する問題であり、DOI財団が非営利団体であるというステータスによって控除が決まるわけではありません。
会員戦略会議
DOI財団会員戦略会議は少なくとも年1回、通常は年の中間と年末に各1回開催され、全メンバーとメンバー以外のゲスト(招待された場合のみ)に公開されています。会員は次回の会議について電子メールで連絡を受けます。
会員組織のDOI代表者
DOI財団会員の各組織は、DOI関連事項を担当するDOI代表者を1名指名しなくてはなりません。DOI代表者は、特にすべての理事会や投票に関わる案件において各組織を代表することになります。会員は代表の変更についてDOI財団への連絡を徹底しなければなりません。代表者が会員の組織を去る場合や代表者の役割を降りる場合は、各組織で後任を指名します。
会員の組織からDOI活動に参加する者を追加することもできます。
試し用プレフィックス
DOI財団に加入すると、各会員は試しの目的で固有のDOIプレフィックスを利用できます。試し用プレフィックスで割り当てられるDOI名の数が検討され、DOI財団の裁量で制限される場合があります。試し以外の目的でさらにDOIプレフィックスが必要な場合、会員は登録機関会員のいずれか1会員と協力する必要があります。試し用プレフィックスは、特に、アプリケーションを開発して将来的に登録機関になることを検討している会員を対象としています。この試し用プレフィックスを申請、使用方法についての相談は、DOIテクニカルサポートサービスプロバイダー()に連絡してください。
2.1.6 DOI財団のガバナンス
DOI財団は、選出された理事会を通して会員により管理・運営されています。
理事会
理事会は、方針の策定や規格の維持管理など、DOIシステム管理のあらゆる面について責任を担います。
理事会の構成は次のとおりです。
- 理事会役員:理事会から選出された議長、副議長、会計係
- 理事会メンバー
次のルールに従い、DOI財団の会員は理事会メンバーになります。- すべての創立会員は自動的に理事会メンバーとなる。
- すべての登録機関(RA)は、登録機関会員として1年が経過した後に自動的に理事会メンバーとなる。
- 一般会員は理事会の1議席に代表を立てることができる。任期は3年で、既存の一般会員から推薦される。複数名が推薦された場合の選挙の手続きは付属定款に規定されている。
- 提携会員は理事会に代表を立てることができない。
理事会は、理事会議席数の配分や数を適宜見直します。
注:理事会メンバーは、DOI財団に対する活動の報酬を受けません。
執行委員会
執行委員会は理事会の小委員会で、理事会によって選出された3名以上の理事で構成され、理事会の議長が委員長を務めます。執行委員会は理事会の合間に会合し、理事全体での会議を必要としない問題や緊急協議の必要がある問題に取り組みます。実際には、執行委員会は通常、議長、副議長、会計係で構成されます。
経営代理人
DOI財団の理事会が、DOI財団の管理とDOI財団によって策定された方針の実施について責任を負う経営代理人を任命します。
理事会会議
理事会は定期的に開催されます。会員が理事会で検討されるべきと考える問題は、まず経営代理人か理事会メンバーに報告する必要があります。指定された非公開の役員会議を除き、理事会は全ての会員がオブザーバーとして出席し参加できますが、投票することはできません。
各組織のDOI代表者は、すべての理事会会議や投票に関する問題で組織を代表します。理事会の議長の合意を事前に得れば、理事会会議で組織から別の人物を代理に立てることができます。